ラッピングバスのデザインができるまで

こちらでは、Tiramisuがデザインを担当させていただいた、厚木市制70周年記念ラッピングバスのデザイン制作プロセスをご紹介します。

制作スケジュール

・5/28:デザイン依頼
・6/28:70周年ロゴ決定(公募)
・7/09:デザインデータ入稿
・7/19:色校正
・8/02:ラッピング施工
・8/03:ラッピングバス運行開始

デザイン制作にかけられた期間は、ご依頼から入稿まで約1ヶ月とタイトなスケジュールでした。この約30日間を、アイデア出しに10日、制作に10日、修正に10日、という配分で進めました。とはいえ、他の作業も並行していたため、実際の制作時間はさらに限られていました。

私の制作スタイルとして、時間は「多ければ多いほど良い」というものではなく、案件ごとに適切な時間があると考えています。その時間が長すぎても短すぎても、良い結果には繋がりにくいと感じています。

制作ノート

厚木市を表すもので、過去から現在、そして未来まで消えずに残っていく、「それは何か?」と考えた時、厚木の市章と厚木市の花「さつき」を使ったデザインを思いつきました。

厚木市の市章は昭和25年、厚木町の町章から引き継がれ使用されているものです。市章はあつぎの3字と鮎3尾をもって「あ」の字型を図案化し、市民の和合と発展を象徴しています。厚木市の花「さつき」は自然豊な厚木を代表する花であり、この2つがデザインのモチーフとなっています。

さつきの花をモチーフにすると決めてから、事務所の前に咲いていた、さつきの花を分解してみました。


まずは、さつきの花をAIで画像生成してみましたが、うまくいきませんでした。ここで「これはいけそうだ!」という何かが出てくればうれしかったのですが、気持ちを切り替えて次に進むしかありません。


ラッピングバスでは、上部の赤い部分にはデザインを入れることができません。他にもいくつか規定がありますが、ここでは割愛します。また、デザインは審査を通過する必要があり、バス会社の審査に加え、行政案件の場合はそちらの審査もクリアしなければなりません。


まずは、さつきの花の写真を切り抜いて配置し、イメージを確認します。この段階では、うまくいくかどうかはまだ半信半疑ですが、同時に「これでなんとなくいけるかな?」という感触を掴むこともできました。


さつきのグラフィックを丁寧に作っていき、デザインとして機能するかどうかを検討します。


ハレの舞台にふさわしく、記憶に残るグラフィックイメージをさつきの花で表現しました。第一印象が華やかで洗練されるよう、形と色に注意を払いました。さらに、さつきの花は、市章との形状が似ており、並べると相性が良く、統一感のある形になっています。


市制70周年という節目を、単なる数字ではなく、市の歴史と未来をつなぐものとして表現したいと考えました。これまでの60年、50年、40年といった歩みが現在の豊かさを作り、それがさらに次の時代へと発展していく。この思いを込めて、市章の隣に1から70までの数字を配置。これは、過去の積み重ねと現在の繁栄を祝い、そしてバス後部に掲げたキャッチフレーズが示す未来へと、その思いを繋いでいくことを象徴しています。


市章は一定のパターンに限定されず、バスに合わせた有機的な配置が施されています。市章が集まって動きを持つことで、厚木市民を表現します。また、配置は完全に自由なわけではなく、一定のルールに基づいており、それによって社会が形成されています。さらに、鮎が泳いでいる様子も想起させるデザインとなっており、市章の由来である「あつぎ」と「鮎」両方の意味を含んだデザインになっています。


バスの右側と左側で異なるデザインを制作しました。規則性を持たせつつ、動きを感じさせるデザインになるよう調整し、これならいけるという手応えをつかむことができました。

初稿


提出した初稿がこちらになります。

修正稿

初稿を提出したところ、「ドアの70周年をもっと目立たせてほしい」と、「バス後方の誕生日ケーキを外してほしい」という要望がありました。


上の画像は初稿のデザイン。厚木の市章に1から70までのナンバーを添え、1をバースデーケーキに見立てました。ケーキには、厚木の名物である苺をあしらい、厚木の誕生を表現しています。


バス後方の誕生日ケーキを外すとデザインのバランスが崩れるため、代わりに「70th anniversary Atsugi City」と「1 February 2025」を追加しました。

「ドアの70周年をもっと目立たせてほしい」というリクエストには、ドアのデザインを2パターン用意し、選んでいただいた結果、B案に決定しました。

決定稿

ラッピングバスのデザインは、こうして形になりました。私自身、初めての試みだったため、この貴重な経験を備忘録として、またこれから同様のデザインに挑む方々にとっての一助となることを願って、ここに書き残します。

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